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9月の7日から15日にかけて、ドイツのザクセン州にあるライプチヒという都市で 日本の家 ( http://djh-leipzig.de/ja )の主催で開かれた 都市の「間」 ワークショップに参加してきました。

このワークショップは私が大学時代から関わっていた尾道空き家再生プロジェクト( http://www.onomichisaisei.com )に教えて頂いて参加に至ったのですが、尾道とライプチヒは比較してみると色々と似ている点があってとても興味深いです。
広島市からも岡山市からも電車で約1時間半、広島県の外れに位置する尾道市は面積285.09㎢、人口140,000人。
ベルリンから電車で約2時間、旧東ドイツであるザクセン州の外れに位置するライプチヒは面積297.36㎢、人口531.582人。
面積はほぼ同じですが、人口はライプチヒの方が圧倒的に多く、人口密度は尾道市がライプチヒの1/3ほどになります。
ライプチヒ本駅を降りてすぐの中心地の賑わいは広島市と同じくらいな感じで、現在のところ旧東ドイツではベルリンに次いで2番目に大きな都市と言われています。
文化面ではバッハやメンデルスゾーンゆかりの地でもあり(バッハのお墓が近くにあります)、製本や印刷で栄えた歴史のある本の街としても知られています。
(ワークショップのあと滞在を一日延ばしライプチヒの外れにある製本所で美術書籍を作る手伝いもしてきました。畑に囲まれた長閑な場所の清潔感ある製本所で、古い印刷機などもさり気なく展示されていて本好きにはたまらない環境でした。今回は行けませんでしたが本の博物館もあります。)
詳しく紹介すると長くなるのでもっとお知りになりたい方はWikipedia ( https://ja.wikipedia.org/wiki/ライプツィヒ )などをご参照下さい。

マルクトプラッツに並ぶ旧商工ギルドの建物
ライプチヒ中心駅から徒歩15分ほどのところにあるマルクトプラッツに並ぶ旧商工ギルドの建物


さて、今回参加したワークショップは都市の「間」をテーマに都市の中で人々がフリースペースとどの様に向き合い、活用しているのかをフィールドワークを主な手段として調査し、発表することを目標として開かれたものでした。
ここで言われるフリースペースとは何か?
それは公園などの行政が市民に向けて解放している公共の空間のことではなく、空き家や廃墟、空き地、工場跡地などを指しています。

ライプチヒは元々貴族や領主の治める城下町ではなく、幾つもの商業ギルドが建ち並ぶ商人の街であり、産業革命から第一次世界大戦にかけて人口と工業生産力を急激に伸ばした産業都市でした。
第二次世界大戦後ソ連占領下の東ドイツに組み込まれ、東ドイツの主要工業地帯となり、中心部から郊外にかけてプラッテンバウ(Plattenbau)というプレハブ工法の労働者向け住宅が大量に建てられ団地が出現しました。
しかし、東ドイツの統治下より人口は徐々に減少、ベルリンの壁の崩壊を機に人々が一気に西ドイツエリアに流れて行き人口が激減します。
実はライプチヒはベルリンの壁の崩壊の端緒となったデモなど住民運動の発祥地として知られているのですが、その結果ライプチヒは衰退していき、「縮小都市」の代表例となってしまったのは何とも皮肉なことです。
中央駅周辺の中心地付近こそそれなりの賑わいを見せているものの、現在は昔のような主な産業はなく、かといって目立った観光資源があるわけでもなく、人口の減少によって生まれた大量の空き家・空き地・廃墟・工場跡が残され、それらによって治安環境も悪化してしまいました。
特に日本の家が置かれてあるアイゼンバーン通り周辺はおよそ35%を空き家が占め、それらの空き家に浮浪者が住み着いたり薬物の違法取引やイリーガルクラブ、売春などが行われ、ギャングの勢力拡大から抗争なども起き、一時期週刊誌やテレビ番組で「ドイツ最悪の通り」と言われたほどです。
(例えばこんな感じに https://www.youtube.com/watch?v=30NvVsP4KiQ
特に酷かったのは数年前までで、確かに現在も夜は人通りが少なく落書きや人の目の行き届かない荒れた空き家なども多いですが、汚い落書きが多いのはベルリンも似たようなものなので実際に訪れてみるとそれ程身の危険は感じませんでした。
空き家・空き地・廃墟・工場跡などの人口減少によって生まれた都市の間は犯罪の温床になるとして強く問題視もされていますが、同時にそれらの間を人々が様々な試みを行える可能性のあるフリースペースとして捉え、活用しようとする個人や市民組織の運動も活発で、同じく空き家が多くそれらを活用しようとしている個人や市民組織の多い尾道と状況がとても似ていて面白いです。

アイゼンバーン通り付近の荒れた通り
アイゼンバーン通り付近の荒れたストリート。道路の管理が杜撰で地面がボコボコになっている感じが旧東ドイツ的。建物の一階は防犯の為に板やコンクリートブロックで塞がれていることが多い。


フリースペースに対する取り組みは様々ありますが、状況を大別すると行政や大規模な組織が主導するトップダウン型、市民活動が主導のボトムアップ型、行政や組織と市民がそれぞれの立場で協力し合う連携型の三つの型があると僕は考えています。
今回のワークショップでは主に市民活動が主導のボトムアップ型に焦点を据えてフィールドワークを行いながら、それらが行政や大規模な組織とどのような関係性にあるかも軽く触れて見て来ました。
そして更に、訪れる先を「食・環境・緑地」「オルタナティブな住処(普通とは違う生活環境という意)」「多文化共生」「子供と家族」というテーマに分けてワークショップを行いました。
もう既に記事が長くなってきているのでフィールドワークの詳しい内容と所感についてはテーマ毎に分けながら次の記事に書いていきたいと思います。

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